内容一致問題と裁判について
2020/04/30
内容一致問題と裁判について。
読解問題、特に内容一致(内容正誤問題)について、どのように学べばよいですか?という相談は多いです。
実は、現代文の読解や、英語長文読解について、共通するキーワードがあります。
キーワード・・・
それは、「内容一致問題は、裁判である!」
内容一致問題は、選択肢1から4のうち、本文内容にあっているまたは間違っているものを選べ、という形式です。
例えばこんな感じです。
(本文)
昔々、ある所に、おじいさんとおばあさんが山奥に住んでいました。
ある日、おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
おばあさんが川で洗濯していると、川上からおおきな桃が、どんぶらこどんぶらこと流れてくるではありませんか。
おばあさんは、その桃をつかまえて家へ持ち帰り、おじいさんと一緒に食べることにしました。
おじいさんが山から帰ってくると、おばあさんは、包丁で桃を切りました。
すると、その中からかわいらしい男の子が出てきました。
二人には子供がいなかったので、桃太郎という名前を付けて、大切に育てました。
(設問)本文に一致するものを、選択肢1から4の中から、1つ選びなさい
1.おじいさんとおばあさんは、貧しかった。
2.おじいさんは、おばあさんが桃を見つけることを予想していた。
3.おばあさんは、桃が大好物だった。
4.おじいさんとおばあさんは、桃太郎のことを愛していた。
さて、みなさんは、何番が正解だと思いますか?
ここで、裁判の話をしましょう。
裁判は、事実の有無を認定し、その事実の存在が認められたら勝訴判決を出します。
では、事実認定は、どのようにするのでしょうか?
もし、裁判官が好き勝手に、気分やノリといった主観で事実の有無を判断できるとしたら、だれも裁判所を信頼しなくなります。
だから、「証拠」という客観的なものに基づいて、事実認定はなされます。
さて、先ほどの設問に戻り、選択肢を「証拠」に基づいて正誤判断してみましょう。つまり、事実認定です。
では、証拠はどこにあるのでしょうか?
もちろん、本文中にしかありません。本文以外は証拠になりません。
あなたの主観的な思い込みは証拠になりません。それはただの主観的な裁判であり、だれも信用しません。
それぞれの選択肢は、客観的な証拠に基づいて、事実として認定できるでしょうか?
1について。
1.おじいさんとおばあさんは、貧しかった。
本文中に、2人が貧しかったという記述はありません。
確かに、おばあさんが川へ洗濯に行っていることは、家に洗濯機がないということがうかがわれますが、昔々の話しなので、そもそも洗濯機は存在しません。
したがって、1番は、本文中に証拠がないので、事実ではありません。よって、×です。
2について。
2.おじいさんは、おばあさんが桃を見つけることを予想していた。
確かに、おばあさんは川で桃を見つけました。しかし、おじいさんは、おばあさんが川で桃を見つけることを予想していたとは本文中からは認定できません。
もし、おじいさんが川上から自分でタイミングを見計らって、自分で桃を流したのであれば、おばあさんが桃を見つけることを予想していたと言えますが、そのような事情も本文中には書かれていません。
したがって、2番は、本文中に証拠がないので、事実ではありません。よって×です。
3について。
3.おばあさんは、桃が大好物だった。
確かに、おばあさんは、2人で食べるために桃を家へ持って帰りました。このことから、2人が桃を嫌いではないということはわかります。
では、さらに進んで大好物だったと言えるでしょうか?
もし、大好物であれば、もしかしたらおばあさんは独り占めしたいと思わなかったのでしょうか?または、川でつまみ食いしようとは思わなかったのでしょうか?
少なくとも、おじいさんと一緒に食べようと思って家まで持って帰ってきたのであり、冷静です。
さらに、結果的には桃を食べられなかったのであり、がっかりしてもおかしくありません。むしろ、子どもを大切に育てており、桃に対する執着はうかがえません。
したがって、3番は、本文中に証拠がないので、事実ではありません。よって×です。
4について。
4.おじいさんとおばあさんは、桃太郎のことを愛していた。
おじいさんとおばあさんには、実の子がいないことが本文中に記載されています。
次に、赤の他人である、桃の中から出てきた子供に、名前をつけています。名前をつけるという行為は、その対象に対して特別な思い入れを持っていることを表します。
さらに、大切に育てたと記述されています。大切にするということは、桃太郎がすくすくと健康に育つために手間を惜しまず大きくなるまで愛情を注着こんだということにほかなりません。
したがって、4番は、本文中に証拠があるので、事実です。よって○です。
まとめ
このように、内容一致問題は、本文中から証拠を見つける作業にほかなりません。
「内容一致問題は、裁判である!」です。
もっとも、証拠を見つけるためには「一般常識に属する経験則」が必要であり、日ごろから常識を身につける姿勢が必要です。
※「経験則」については、以前に書いた記事を読んでください。
現代文であれば、現代常識が必要です。
古文であれば、古文常識が必要です。
英語であれば、英語常識が必要です。
総じて、常識、すなわち文化の学習が必要です。文化の学習は、社会科(地理・歴史・公民)が多くの役割を担っています。
だから、社会の教科書をよく読みましょう。
社会科と読解問題は、密接不可分の関係にあります。